103号 老後資金の運用について
国の「貯蓄から投資へ」との掛け声で、投資をしないのが悪いような気持にさせられます。
しかし投資は煎じつめれば一種の賭けですから無理にする必要はないと思います。特に老後は若い時とは違い挽回が難しいので運用は慎重にしなければなりません。お金に色はついていませんが運用に当たってはそのお金の性格について考えてみる必要があります。
余裕資金か必要資金か
老後、年金だけでは足りないのは目に見えているのでそれを補填するお金が要ります。これを必要資金と言いましょう。一方この必要資金を確保してもまだ残るものを余裕資金と言いましょう。
お金は沢山あるにこしたことはないので余裕資金がある方は更に増やすために(減らす可能性もありますが)リスクの高い投資をしてみるのもいいでしょう。
ただしここで注意が必要なのは、今すぐ必要ではないといえ何れ必要になるお金の扱いです。定年後徐々に取り崩していくお金、将来持家の補修に使うお金、金婚式に夫婦で世界一周クルーズに使うお金、何れは施設に入るため等々に必要なお金などなどです。これらを「今は余裕資金/将来は必要資金」と呼びましょう。
「今は余裕資金/将来は必要資金をどうするか」
昔はこのようなお金の運用には定期預金がぴったりでした。しかし今は3大メガバンクの利息が0.002%です。これでは運用になりません。ここでどうするかが大切です。
二つの選択肢があります。
- 必要になるときまで利息はほとんどなくとも銀行預金にしておく。
- リスクはゼロではないが極力安全性が高く、利息(利回り)が銀行預金よりはましな商品を探す。
安全性が高く銀行預金より利息(利回り)がましな商品とは
①満期がくれば投資元本が償還される国債・社債などの債権類があります。また一括払いの保険などもあります。しかし、社債の場合はデフォルト(会社の倒産などにより償還されない)のリスクがあります。
また、今証券会社などが紹介する社債や保険などで魅力的な利回りの商品は殆どが外貨のものです。外貨のものは一見安全そうに見えても為替リスクがあります。決して安全ではありません。(為替リスクの具体例はページ下の補足に記します。)
②NISAは国をあげて推奨しているので安全な商品かと勘違いしがちですが、NISAは商品ではなくその枠の中で株とか投資信託を買えば利益に対して税金がかからないという“仕組み”です。投資する対象はリスク商品です。
③長期・積立・分散が安全な資産形成に大切と言われています。これ自体を否定するものではありませんが、これも問題は“何を”ということでしょう。
④実は証券会社などでは扱っていない安全性の高い商品があります。それはある条件を備えた不動産です。中でも東京都心の住居用不動産は大変安全性が高いように思われます。
都心の住居用不動産が安全性の高い理由
①倒産リスクがないこと:株や社債はそれを発行している企業が倒産したら投資したお金
は消えてしまいますが。不動産ではそれはありません。
②価格が安定していること:株式の様に価格が頻繁に大きく変動しないこと。
③安定した収入:特に住居の場合は人の住まいなので賃料が安定的に入ってくること。
④GDP世界第3位の国の首都であり、ニューヨーク、ロンドンと並ぶ国際都市東京は住居の賃貸需要が旺盛でその結果、安定した高いレベルの賃料と資産価値が期待されること。
高額の不動産を買い易くした小口化不動産
都心の不動産は安全性が高いのですが高額です。それを買い易くしたものが小口化不動産です。1棟または1部屋を複数の口数に分割して共有する仕組みです。例えば1部屋5,000万円のマンションを1口500万円で10口に分割して10人の方で共有するような仕組みです。収入も経費も1/10ずつ割当てられ基本は1人で1部屋持っているのと同じです。
●以下は本文の補足です。
①為替リスクは怖い
先日不動産は出口が確定できないから心配だ。自分は外貨建て保険を買っている。これは「購入元本と同額が返ってくるのが確実だから安心だ」とおっしゃる方がおられました。本当に安心でしょうか?
次のような例を想定してください。
本日10,000ドルの保険を購入:1ドル=145円 支払った円価1,450,000円
10年後満期時10,000ドルが償還:1ドル=80円 戻った円価 800,000円
なんと1,450,000円が800,000円に目減り。100が45になったということです。
これは架空の例ではありません。実際に2012年には1ドル80円で10年経った2022年10月には147円となっています。為替はこんなに変わるものなのです。
②小口化収益不動産の出口金額と収支(当社JAssetから想定した事例です。)
1部屋5,000万円のマンションを1口500万円で10口に分割。想定分配金利回り3%、運用期間10年の場合のトータルの収支は次の様になります。
このように10年後の売却額が当初購入額の70%でもトントンということになります。
満了時の1室の売却額 | 1口への償還額 | 10年間の分配金 | 10年間の収入合計 |
当初の 投資額 | 10年間トータルの損益 | |
case1 |
5,000万円 (100%) | 500万円 | 150万円 | 650万円 |
-) 500万円 | +150万円 |
case2 |
5,500万円 (110%) | 550万円 | 150万円 | 700万円 |
-) 500万円 | +200万円 |
case3 |
4,000万円 ( 80%) | 400万円 | 150万円 | 550万円 |
-) 500万円 | +50万円 |
case4 |
3,500万円 ( 70%) | 350万円 | 150万円 | 500万円 |
-) 500万円 | ±0万円 |
上表の読み方:一番上のcase1を例にとると、満了時の1室の売却額が5,000万円なので1口への償還額は500万円。10年間の分配金は150万円なので10年間の収入合計は650万円になります。他方、購入時に500万円支払っているので差引き150万円が利益になります。
(*厳密には将来の収入は現在価値に割引かなくてはならないのですが大筋の考え方を表示。)