106号 2023年年末雑感

2023年も残すところ僅かになりました。1年の過ぎる速さに驚きます。歳のせいなのか、それともひっきりなしに様々なことが起きる世相のせいなのか。
今回は小口化不動産とは関わりなく個人的に年末に感じることを綴ってみます。あくまで筆者個人の所感でありますので、その旨ご承知の上お読みいただければ幸いです。

新しい経済対策に思うこと

①所得税減税措置について

物価高への対応の一環として、税収が増えたので所得税減税という形で国民に還元する、税金を払っていない人には一時金を支給するとのことです。
しかし、これまで税収が増えても財政赤字が増え続けてきています。つまり増収分以上の歳出をしてきたことになります。わが国の国債残高は1,000兆円超、GDPの2.6倍と先進国の中で群を抜いています。日本に次いで国の借金の多いイタリアでさえGDPの1.4倍です。予定より税収が増えたと言っても財政赤字には変わりはありません。
少しでも借金を減らすことに使うのが本筋ではないかと私は感じています。
国民の負担を和らげたいとの思いはありがたいことですが、コロナ禍による多大な出費の後ですので財政規律を守る姿勢が大事ではないでしょうか。

●債務残高の国際比較(GDPに対する国債残高の比率)
 2008年2010年2012年2014年2016年2018年2020年2022年2023年
日本180.9205.9226.1233.3232.4232.4258.7261.3258.2
米国73.495.1103.0104.5107.2107.4133.5121.7122.2
英国49.274.083.186.186.685.2105.6102.6106.2
ドイツ65.782.080.775.369.061.368.066.567.2
イタリア106.2119.2126.5135.4134.8134.4154.9144.7140.3

*財務省資料に掲載されている IMF”World Economic Outlook”(2023年4月)データを転載

②エネルギー製品高騰への対応について

減税措置もそうですが政府のエネルギー消費への対応にも疑問を感じます。
ガソリンや電気・ガスなどへの補助金を延長するようです。物価高に対する国民の負担を和らげるのは事実ですが、これはエネルギー関連製品の消費を促す結果となります。
1973年以降の第1次、第2次オイルショックのときには国民も企業も高騰した石油の輸入価格に対応するために省石油の努力をしました。その結果、日本経済は省エネ型の効率的な経済となり国際競争力を高めました。
現在の様に輸入エネルギーの価格が高止まりしているときに補助金(財源は国の借金)を増やしてその消費を促進することは、結果的に輸入代金としてわが国の所得の海外流出を促進し日本の経済体質を弱めることになるからです。

政治のスローガンについて

第2次安倍政権は三本の矢として大胆な金融政策、機動的な財政政策、投資を喚起する成長戦略をスローガンとして掲げました。しかし財政政策、成長戦略を評価する声はあまり聞かれません。2012~2020年の安倍政権下では日銀の異次元の金融緩和策により円安・株高が進みました。この株高により経済活動が活発になったように見ますがわが国のGDPは伸びていません。“異次元の金融緩和”により国債残高は増え続けましたが少なくとも“経済成長”という切り口からはその成果は覗えません。

●主要国名目GDPの推移(一国の欄の上欄は10億US$、下欄は指数)*IMF統計による
 1990年2000年2012年2020年2022年
日本3,1964,9686,2725,0504,237
100155196158133
米国5,96310,25016,25321,06025,462
100172273353427
ドイツ1,5981,9483,5293,8844,085
100122221243256
英国1,1981,6692,7062,7063,081
100139226226257
中国39612058,53914,86217,886
100304215637534517

かつて、池田勇人首相の所得倍増計画、田中角栄首相の列島改造計画ではそのスローガンの下で(スローガン通りかどうかは別として)日本は少なからず変わりました。
安倍元首相の“三本の矢”や岸田首相の“新しい資本主義”はその目指すところが明確でないためその成果が大変見え難くなります。スローガンは目標が明確(具体的)であり、行う者(政府)も観る者(国民)もその進捗や成果が測れるものであってほしいと思います。

来年こそは

今年2023年の日本のGDPはドイツに抜かれ4位に転落する様です。これはドイツの大幅な伸びによるものではなくわが国の停滞によるものだと思われます。
そのような中で明るい兆候も出てきています。インフレ、賃金上昇において欧米諸国に対して周回遅れの日本ですがこの春先より少しずつ状況に変化が出てきています。昨年来2%を超える物価上昇率が見られ定着してきたかに思われます。実質賃金もマイナスですがじわじわと上がっているようです。国際収支の赤字幅も減ってきました。日銀総裁も4月に変わり大変慎重ですが超金融緩和終了の方向に舵を切っています。米国のインフレも終息かと見られ高金利も頭打ちとなりそうです。円とドルの金利差が縮小の方向に向かい、いよいよ円対ドルの為替の反転が期待されます。
今、一年前とは明らかに状況が変わっています。来年は更に変わり、漸く長いトンネルから抜け出す年となるのではないでしょうか。
経済は人々が好況を期待するとそのように変わるそうです。来年は久々に上向きの経済を実感できる年になるよう期待したいと思います。

【不動産特定共同事業許可番号:
東京都知事第94号】
不動産特定共同事業法とは、不動産特定共同事業の健全な発達と投資家の利益保護を目的とした法律であり、事業を営むには主務大臣(国土交通省)もしくは都道府県知事の許可が必要です。
「一口家主 iAsset」は株式会社クレアスライフが賃借人として、オーナー様と賃貸借契約(不動産特定共同事業法第2条第3項第3号の不動産特定共同事業契約)を締結します。