第14号 マイナス金利の時代が到来
【やさしい資産運用のお勉強 】
日銀は1月29日にマイナス金利の導入を決定しました。昔からお金を貸せば利息がもらえるのが常識でした。ところが何と逆にお金を預けたら手数料を払わなければならない、ということです。まさに「びっくりポン」です。今回はこの決定が私たちにどのような影響をもたらすのか、それにどのように対応したら良いのか考えてみたいと思います。
マイナス金利とはどういうことなのでしょうか。
今回の日銀の決定は、民間の銀行が日銀に預けている当座預金にマイナス金利をかけるということです。金利を付与するのではなく、手数料のような形で逆にお金を徴収することで、日銀への預金を減らすことを目的としていまあす。これはあくまで民間銀行の日銀に持つ預金に対することで、われわれ個人の預貯金の利子がマイナスになることではありません。
マイナス金利の狙いは何でしょうか。
昨年の年央から中国経済の失速や原油価格の低下を受け世界的に株安が進行しています。そういった中で安全通貨と言われる円が買われ、一頃123円まで下がったものが115円台に急騰しました。これは株安の要因となり株価は乱高下しています。このような状況の中でマイナス金利を導入することにより余計なお金を日銀の当座預金に残したままとするのではなく、その資金を貸し出しや株式や外国の証券などに振り向けさせ、再度円安や株高を誘導し日本経済の活性化を促そうとするものと言われます。その結果GDPを成長軌道に戻し、企業の賃上げ環境を整え2%の物価上昇の実現を目指したものと思われます。
では、われわれ個人に影響はないのでしょうか。以下は直近の新聞記事です。
2月2日 日経第1面 預金金利 最低水準に MMF 一部停止
この記事ではソニー、横浜、八十二銀などがマイナス金利による損失を補うために定期預金金利を引き下げるという。 また三菱UFJ国際投信、みずほ投信投資顧問などがMMFなどの短期国債や社債で運用する投資信託の購入受付けを停止するという。短期金利のマイナス幅が拡大し十分な運用利回りを確保しにくくなったためとのこと。
2月3日付 日経第1面 普通預金 企業から手数料 マイナス金利受け 三菱 UFJ 銀検討
要点は、三菱UFJ銀は大企業などの普通預金に口座手数料を掛けることを検討している。中小企業や個人に対しては口座手数料は見送るが定期預金の金利引き下げを検討しているとのこと。
また、大和総研によるとマイナス金利政策で先行している欧州では法人や富裕層からマイナス金利コストを徴収する取り組みが進んでおり、小規模の銀行では個人預金に適用する例もあるという。
2月3日付 日経第2面 個人向け国債 募集中止 10年物で初 利回りマイナス見通し
利回りがマイナス見通しとなったため10年物の新型窓口販売国債の募集を中止。2年債や5年債の募集を既にとりやめており、窓口販売の国債がすべて募集中止となる。
以上は1月29日の決定からわずか5日間の新聞記事です。私たちの生活への影響が少なくないことが分かります。
- ソニー銀の普通預金では1億円預けて1年間の利息が約800円です。他行でも一層の利率引下げを検討中です。
- 低利回りではあるけれど手軽に購入できたMMFや新型窓口販売国債の募集が中止になりました。
- 企業の普通預金に対しマイナス金利を適用する検討が進んでいます。
- 欧州の例のように個人の預金にもマイナス金利が適用される日が来るかもしれません。
今後、マイナス金利を巡って更にいろいろな問題が派生するものと思われます。
マイナス金利を避けたお金はどこに行くのでしょうか。その影響は?
当面マイナス金利が適用されるのは新たに日銀の当座預金に預けられる資金に対してとのことですが、マイナス金利を避けるためにマネーはどこへ行くのでしょうか。そもそも資金需要(実需)が弱いから日銀の当座勘定に眠っている預金があるけで、マイナス金利になったからといってその状況が変わるわけではありません。このような状況で主要な行先の一つは株式市場と言われます。
本当に経済活動が活発化し企業業績が伸びて株価が上昇するのであれば健全ですが、余剰なマネーが流れ込んで形成されたバブル株高は大変危険です。いつはじけるか分かりません。株式投資は今まで以上にリスクが大きくなると思われます。
八方塞がりの資金運用
預金金利の一層の低下、MMFや新窓口販売国債の発行停止、リスクが増大する株式投資。そしてもし個人預金にもマイナス金利が適用されるようになると、お金の絶対額が減ってしまいます。インフレの時はインフレ率の分だけお金の価値が減るので、絶対額が減り、価値も減るというダブルパンチの時代がきかねません。預貯金で安全運用とはならないのです。
1月25日 日経第3面 預金なぜ膨張? 「長生きリスク」で逆流
シニア層が長寿化で老後の生活費や医療費がどれだけ必要か分からないので、節約してお金を貯めている産特定共同事業からとのこと。「貯蓄から投資へ」に乗って株式投資信託で大きな損失を被った人は、「もう投資はこりごり」「何を買えばいいか分からない投資よりも、預貯金で安全に運用する方がいい。老後資金をこれ以上失いたくない。」
「儲けること」よりも「損をしないこと」
新聞や経済誌の「投資講座」的なものでは必ず株式や投資信託を国際的に分散させて長期投資することを勧めています。銘柄や通貨の分散によりリスクが分散されて長期的景気変動の中で儲けるチャンスがあるというのが論拠のようです。私はこれには賛成しません。リーマンショックを見ても分かるように分散させてもリスクは世界同時に起きます。長期的と言ってもいつまで待ったらよいのかわかりません。このような時代には「儲けること」よりも「損をしないこと」に徹することが大切だと思います。 我田引水のようで恐縮ですが、「一口家主 iAsset」のようなローリスク・ミドルリターンの商品で確実に元利を確保することをお勧めします。