第29号 安定的な不動産の小口化商品について / 「一口家主」が「至れり尽くせり」であること
【一口家主をもう少し詳しく】
昨年のマイナス金利導入以来、元本の安全性が高く利回りが安定的な不動産の小口化商品が注目を集めています。今回はその不動産の小口化商品についてご説明します。尚、文中の「単純小口化」とは小口化したのみでリスク回避等の仕組みがないものを指します。
小口化不動産の種類
不動産そのもの(実物不動産)とは
小口化不動産のうち実物不動産というのはマンションやビルなどの不動産を複数の投資家が共有する形です。1戸のマンションのどの部分を誰のものと分けるのではありません。そのマンションの所有権が幾つかの権利に分けられて、その分割された権利を購入し、所有する形です。この分割された権利を共有持分権と言います。共有といえども不動産を所有していることには変わりません。皆様はそのマンションのオーナーになるわけです。所有権は登記されます。
出資商品
実物不動産に対して、不動産会社などがマンションやビルを購入するために出資金を募集し、これに応じて皆様が出資をする形があります。この場合皆様は出資者であり、そのマンションやビルの所有者は不動産会社となります。皆様は出資の証として一種の証券を手にしますが、その不動産の所有者にはなりません。このタイプの商品は住友不動産のサーフなどの不動産特定共同事業の匿名組合型商品やリートなどです。
実物不動産と出資商品の違い
2も3も、対象とする不動産から得られる賃料を皆様の持分権なり出資金額に応じて分配する仕組みは同じです。
一番の違いはその不動産が誰のものかという点です。その違いが一番あらわれるのは事業を運営する会社が倒産した時です。 実物不動産を購入した場合は、万一、運営会社が倒産しても、共有持分は自分のものとして登記されているので皆様の所有権には何の影響もありません。しかし、出資商品の場合は皆様の出資金で買った不動産は会社のものなので、清算の結果次第では出資元本が戻ってくるかどうかわかりません。また、実物不動産の場合、相続税が軽減されます(近々に詳しく解説します)。出資商品では相続税の軽減効果はありません。
【やさしい資産運用のお勉強】
実物不動産型には2種類あります(前記 小口化不動産の種類の図)。単純小口化タイプは数社が行っていますが、「一口家主」タイプはクレアスライフのみです。下で両者の違いを説明しますが「一口家主」は「至れり尽くせり」であることがお分かり頂けると思います。
「一口家主」タイプの仕組み
不動産特定共同事業法で定められた賃貸型という仕組みです。皆様に購入して頂いた共有持分をクレアスライフが①賃借して②1戸として入居者に賃貸し③皆様に家賃をお支払いする仕組みです。
単純小口化の仕組み
不動産特定共同事業法で定められた任意組合型という仕組みです。共有持分を皆様に買っていただくまでは1と同じなのですが、①皆様は共有持分を事業者(任意組合)に出資して②出資された共有持分は1戸として事業者名義で登記され④それを入居者に賃貸して⑤皆様に家賃を支払うという仕組みです。
「一口家主」と単純小口化の違い① 登記名義
「一口家主」の場合は自分の登記名義の共有持分を事業者(クレアスライフ)に貸すだけです。他方、単純小口化の場合は、自分名義で登記された共有持分を出資します。いわゆる現物出資です。出資された共有持分は任意組合の理事長名に移転登記されます。
「一口家主」と単純小口化の違い② 空室リスク
「一口家主」では、賃料は借上げ保証しているので空室リスクはありません。他方、単純小口化ではそのような保証のある商品はありません。テナントが退去して次の入居者が決まるまでなどの空室リスクがあります。
「一口家主」と単純小口化の違い③ 出口 投資元本の安全性
「一口家主」では、5年後に運用が終了するとき、共有持分の優先劣後の仕組みによりマンションの評価額が20%超下がらない限り投資元本は毀損しません。また、評価額が上がっていれば元本に上乗せされます。一方、単純小口化型では一定期間(10年とか20年とか)の運用期間を決めて、その間に物件価格が上昇し売買益が得られるチャンスがあれば物件を売却して事業を終了します。しかし価格が下がり満期になったら売却損が出て終了ということになりかねません。多分に賭けの要素があり元本の安全性という観点からすると心配です。