第42号 2040年に社会保障費は190兆円 / 前号のおさらいと不動産投資に当たっての注意事項
【一口家主をもう少し詳しく】
5月21日の政府公表の推計によると、2040年に社会保障費は190兆円となり、2018年に比べ22年間に約70兆円増加する見通しです。しかしその財源は大丈夫なのか。結局は年金は減り、医療費・介護費の自己負担は増えることになりそうです。
社会保障費の財源は社会保険料と税金
社会保障費を賄うための財源は個人や企業が負担する社会保険料と税金です。全体の約6割が保険料で、4割が国庫負担つまり税金で賄われています。その時々の現役世代が支払う保険料や税はマクロ的には経済成長の伸び率に依存します。しかし、生産年齢人口が減少していく我が国にあって、社会保障費の増大に見合った経済成長を期待することは現実的とは思えません。
現実的に起こりうることは
政府の推計のように社会保障費が増えるためには、それを支える社会保険料と税収があればこそで、それがなければ、そのような社会保障費を負担の仕様がないということになります。
財源が足りなければ、国としては支払うもの(支出)を減らし、受け取るもの(収入)を増やすということにならざるを得ません。
このような状況で、社会保障費の中の大物である年金・医療費・介護費が今後どうなりそうか、が私たちにとって最大の関心事です。
減っていく年金
年金の国庫負担の増加を減らすには2つの方法があります。
一つは支給開始年齢を引き上げること。厚生年金の報酬比例部分の受給開始年齢は、順次65歳まで引き上げられることになっていますが、これが更に70歳、75歳と引き上げられることになるかもしれません。
そしてもう一つ考えられるのが、既に受給している年金額の実質的引き下げです。2004年に導入されたマクロ経済スライド制です。現役加入者数の減少と平均余命の伸びに合わせて給付水準を毎年実質的に引き下げていくものです。
高齢者医療費・介護費用の自己負担の増加
医療や介護の公的保険制度では、利用者はサービスの費用の1〜3割を負担し、残りは税金や保険料で賄っています。
医療では原則として70〜74歳の高齢者は2割、75歳以上の後期高齢者は1割となっています。しかし、後期高齢者の窓口負担を1割から2割、3割に上げるなど負担増はまぬがれないでしょう。
介護費も同様に、自己負担を現在の原則1割から2割、3割にする、要支援者や要介護度が低い人への生活援助サービスを自己負担にするなどの方向に行かざるを得ないと思われます。
結局は自助努力が重要に
減っていく年金、増える医療費・介護費の自己負担。人生100年時代を生きていくには結局は自助努力しかないようです。iDeCo、つみたてNISA、株式指数投資、トンチン年金、不動産投資など、自分の年齢、資金、経験、リスク等を勘案して自らの老後保障を図っていくことが重要です。
米国での統計ですが、株式などの投資に失敗して財産の多くを失った人は、同年代の人に比べて早死する割合が極めて高いそうです。人生100年に備えるつもりが何のための資産運用か分かりません。気を付けたいものです。
【やさしい資産運用のお勉強】
不動産投資は、長期にわたり安定的に利益を生むので、この不安定な時代のあって将に人生100年時代に適したものだと言えます。前号(第41号)では不動産投資の商品の種類とその内容についてご説明しました。今回は不動産投資の注意事項についてご説明します。
前号(第41号)のおさらい
(1)不動産を所有する3つの形
区分所有マンションを例にとると、大きく分けて3つの投資の形があることをご説明しました。
- マンション1戸を購入する
- マンション1戸を何人かで単純に共有する
- マンション1戸を金融商品的にアレンジされた条件で何人かで共有する
上の2と3のタイプを小口化不動産と言い、多額な資金がなくとも自分の懐具合に合せて投資しやすくしたものです。
(2)小口化不動産を扱う事業を不動産特定共同事業といいます。
不動産を小口化した商品を投資家に提供するには都道府県知事あるいは国交省大臣の許可・登録が必要です。この商品の中には、自分で不動産を所有するのではなく出資だけをして配当を受け取るタイプのもの(匿名組合型)もあります。また、リート(J-REIT)は見た目は似ていますが、ここで言う不動産の小口化商品ではありません。尚、小口化不動産には、任意組合型、匿名組合型、賃貸型の3つのタイプがあります。
不動産投資で気を付けること
投資では利回りの良いものを選びたいのは当然ですが、他の商品と同様、利回りの良いものはリスクが大きい、と考えた方が良いでしょう。また目的によっても選び方が変わります。次の点に気を付けてください。
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利回りの表示
表面(グロス)利回りでの表示が多い
・空室率を見込んでいない(稼働率100%)
・固定資産税や修繕費などの賃貸経費を差引かず、収入だけで計算している - 立地は不動産の命。賃貸のつき易い立地か、建物のクオリティーや間取りは?
- 新築を買うつもりか中古か
- ずっと持ち続けるつもりか、一定期間後に現金化する予定か
- 小口化商品の場合、都道府県知事あるいは国交省大臣の許可・登録を正規に受けた業者が扱っているか
- 小口化商品の場合、実際の不動産の共有持分(上記(1)の2、3のタイプ)か。(匿名組合型のものでは、相続税評価額による資産圧縮効果がない、事業者の倒産リスクもある)
- 不動産の種類は何か
一般的には、ⅰ)店舗(商業ビル)、ⅱ)事務所(オフィスビル)、ⅲ)住居(マンション)の順でハイリスクハイリターン