第44号 オリンピック後のマンション投資について / 不動産証券化について
【一口家主をもう少し詳しく】
オリンピックが終わったら不動産の価値は下がるのでは、と多くの方が言われます。そこで当社のマンションをご購入いただいたお客様や、マンション投資にご興味をお持ちで問い合わせを頂いた方にお考えを伺ってみました。その結果をご報告します。
アンケートの結果
(1)当社お客様の回答(複数回答あり)
(2)マンション投資にご興味をお持ちの方の回答(複数回答あり)
*上記の数字(%)は各項目の回答数を回答者総数で割ったものです。
意外と少ない悲観論
一般的にオリンピック後の下落を論じる方が多い様ですが、このアンケートを見るとb、cを回答した方でも一時期的には下がるけれど、いずれは回復するとみています。b〜fの方はオリンピック後に価値が下がったまま戻らないとは考えていません。b〜fの合計は(1)で65%、(2)で63%です。つまり、60%を超える方がポスト・オリンピックをそんなに心配していないということです。筆者も東京に関して言えばオリンピック後は下がるどころか、寧ろ上がると考えています。
東京に関しては景気の動向と不動産の価値とは必ずしもリンクしない
21%、29%の方が「下落したまま戻らない」と考えておられます。たしかに、オリンピックに向けて東京の各地区で再開発や社会インフラなどの投資が高まるので、それらが一段落したときに景気が一時的に下降することはあり得ることです。しかし、バブル崩壊時のような大不況にならない限り、景気に連動して東京の不動産の資産価値が下がるとは思えません。ましてや下落したまま戻らないとは下記の理由により考えにくいと思われます。
再開発により高まる資産価値
現在、東京では2018年〜2020年の開業を目指して多くの地区で大規模再開発が行われています。代表的なものは、渋谷、丸の内・大手町、六本木・永田町・虎ノ門の各エリアそして品川・田町エリアです。大規模再開発は暮らしや住まい方を便利にするだけではなく、再開発地やその周辺の資産価値を高める可能性が高いと思われます。
国際都市に変貌する東京
東京は国際性という点ではロンドン、パリ、ニューヨークと較べてはるかに劣ります。しかし、今後宿泊施設の多様化、街中や交通機関、公共施設等でのAIによる外国語対応、絵記号(ピクトグラム)での案内表示、ITでの多様な代金決済方法の導入等々のソフト面の外国人対応がオリンピックに向けて急ピッチで進展するでしょう。その結果、東京はアジアにおけるグローバルなビジネス拠点として、また魅力ある観光都市として国際都市に変貌し、不動産の価値も高まるものと期待されます。
【やさしい資産運用のお勉強】
今までに何回か不動産特定共同事業法やJリートについて具体的商品内容についてお話ししましたが、これらはいわゆる不動産証券化の一形態です。今回から数回に亘り不動産証券化について、その種類や仕組みについて概要をお話しします。
不動産ファンドとは
不動産ファンドという言葉をよく耳にすると思います。ファンドとは基金とか資金という意味ですが、複数の投資家から集めた資金を用いて投資を行いそのリターンを分配する仕組みのこともいいます。不動産の証券化というのはこのファンドの仕組みにより、多くの投資家から資金を募集して多額の資金を要する不動産を運用し、その収益を分配する仕組みです。
不動産ファンドの仕組み
分かり易い例として、SPC(3で説明)が匿名組合出資を募り不動産を運用する例を下図の番号に従い順番に説明します。
(1)SPCはAMに対象不動産の運用業務(賃貸、維持管理、売却等)を委託する。
(2)SPCは投資家と匿名組合契約を締結し出資金を調達する。
(3)SPCは金融機関より融資を受ける。
(4)SPCは不動産の原保有者(オリジネーター)より対象不動産を購入する。
(5)SPCはオリジネーターに購入代金を支払う((2)、(3)で調達した資金が充てられる)。
(6)SPCは対象不動産を賃貸する。
(7)SPCは賃借人より賃借料を得る。
(8)SPCは(7)で得た賃借料を原資とし、金融機関に元本の返済及び利息を支払う。
(9)SPCは(8)を支払った後、他の諸経費を支払い、その後の残金を配当として投資家に分配する。
SPCとはどんなものか
SPC(Special Purpose Company 特別目的会社)が、ファンドの主役のようですが、実際に投資判断や、賃貸・売買などの実務を行う機能は一切ありません。お金を出し入れする「箱」と考えてください。SPCは通常合同会社で行います。設立コストが安いことと運営がシンプルで使い易いことによります。
実務を行うのはアセットマネージャー
SPCは単なる「箱」と申し上げましたが、では実際に不動産購入の判断や賃貸、売却など運用の実務を行うのは誰なのでしょうか。それはアセットマネージャー(AM)です。しかし、SPCが単に「箱」であるとすれば、いったい誰がAMを任命するのか、また、そもそもSPCをだれが作るのか、これらのことを次回以降にご説明します。