第50号 不動産小口化商品は大きく分けて2種類 /知人のAさんの悩み
【一口家主をもう少し詳しく】
株や投資信託などのいわゆる金融商品に比べて、着実に安定的な利息が期待できるものとして不動産の小口化商品の人気が上昇しています。不動産小口化商品には大きく分けて2種類あります。それぞれのメリット・デメリットをよく理解して資金を運用することが大切です。以下、これら2種類の相違等につきご説明します。
小口化商品とは
小口化商品というのは1棟の建物や1室を複数の口数に分けて出資を募ったり、販売したりする商品を言います。例えば1億円のマンション1室を100口に分けて、1口100万円を出資或いは購入の単位とすることにより、小口の資金でも投資できるようにしたものです。
2種類の小口化商品
1.出資型小口化商品
例えばJ社が1億円のマンションを購入して賃貸事業を行うために1口100万円で100口の出資を募ったとします。この場合マンションの所有権はJ社のもので、投資家は出資者となります。出資者には賃貸運用の利益が分配金としてが支払われます。不動産特定共同事業では匿名組合型と言われるものです。当社が約6年前に「一口家主 iAsset」を始めるまではほとんどがこの匿名組合型でした。
2.所有型小口化商品
これは、J社が開発した1億円のマンションを100口に分けて1口100万円で投資家に販売するタイプです。投資家が購入した口数を持分と言い、その持分の所有権は投資家のもので、投資家の名義で登記されます。投資家の持分をJ社が借り受け、運用益を分配します。
出資型のメリット・デメリット
出資型では、出資した不動産の所有権は事業を運営している会社にあります。もしもこの会社が倒産した場合は、出資金が戻ってくるかどうか分かりません。これは大きなリスクです。半面、多くの出資型の商品では、出資金総額の中70〜80%を投資家の優先出資とし、20〜30%を事業者の劣後出資にします。そのため、運用賃料が20〜30%以上下がらなければ投資家の賃料は減りません。同様に運用が終わって元本を返還する時も、その不動産の売却価格が当初購入価格よりも20〜30%以上下がらなければ投資家の出資金は全額が払い戻されます。出資型ではこのようなリスク軽減の仕組を備えた商品が殆どです。
購入型のメリット・デメリット
購入型では持分の所有権は投資家自身のものですから、持分を借り受けて賃貸運用している事業者が万一倒産してもその所有権が脅かされることはありません。その意味で安心です。また、実物不動産は相続税評価額が実勢価格よりもかなり低くなるので購入型ですと相続や生前贈与の際節税ができます。ただし、購入型の殆どの商品は出資型のような賃料の低下リスクや売却時の元本毀損のリスクを軽減するような仕組みはありません。その中で、当社の「一口家主 iAsset」は、購入型でありながら、賃料の借上げ保証、元本毀損に対する20%までのリスク軽減の仕組がある唯一の商品です。
まとめ
以上ご説明したように、小口化用品でも
- 出資型か、購入型か
- 賃料や元本のリスク軽減の仕組があるかどうか
という点に充分注意してください。
(*購入型は不動産特定共同事業の賃貸型と任意組合型(出資の形をとりますが、実質的には購入型です)が該当します。)
【やさしい資産運用のお勉強】
知人のAさんは3年前に60歳で定年延長して働いています。現在は再雇用先の給与で生活をしていますが、2年後からは収入は年金のみになります。年金だけではとても足りないので年金+蓄えの取り崩し、という生活になりそうです。しかし、それではあまりにも不安なので資産運用により少しでもプラスαの収入を得たいと真剣に検討しています。
Aさんの悩み
Aさんは仕事を辞めた後は株式の運用で年金プラスαの収入を得るつもりでした。値動きの激しい株を売ったり買ったりするのではなく、配当の良い安定した大型株を持ち続け、株価を見ながら必要に応じ売却していこうという計画です。その前提として、株価は短期的には上がり下がりがあっても長期的には右肩上がりになると考えていました。
しかし、ここにきて本当にそのような前提を置いて良いものか迷い始めました。
株価は右肩上がりに上がるのだろうか
「株は長期的には右肩上がりに上がる」とよく言われますが、Aさんはそれに疑問を感じています。たしかに過去日本経済が成長していた時にはそれは言えたかもしれません。しかし、現状にそれが当てはまるとは思えないからです。
今、戦後最長の景気回復が続いていると言われていますが、GDPの伸びは1%強に過ぎず、Aさん自身好景気とは感じられません。2%のインフレターゲット達成も程遠いまま6年が過ぎました。安倍政権になってから株価はV字回復しましたが、これをもって今後とも株価が傾向的に右肩上がりに推移すると考えてよいのだろうか、Aさんの疑問です。
今の株価をどうみたらよいのか
Aさんは、過去の経緯を振り返り、改めて今の株価の位置づけをしてみました。
日経平均株価は1989年末には38,915円に達した後、22年間傾向値としては下がり続け、2011年には8,455円まで下がりました。2012年末第2次安倍政権発足と共に10,000円台に回復し、その後上下を繰り返しながら2018年9月に24,120円をつけました。この6年間傾向値としては右方上がりです。しかし、このことをもって将来もこの延長線上にあるとみてよいのでしょうか。
現在の株価の特殊事情(Aさんの分析)
1.円安による企業業績の改善
第2次安倍政権発足で取られた「異次元の金融緩」和策により円安が加速。2012年末には1ドル80円だったが2015年には121円まで下げた。大幅な円安で輸出関連企業の業績が改善し、グローバル企業の海外資産の円建て評価が底上げされバランスシートが良くなった。株高は企業の開発投資、設備投資の結果としての継続的な収益力の増強によるものとは必ずしも言えないのではないか。
2.日銀の買い入れによる株価の押し上げ
日銀は金融緩和の一環としてETFを通じて大量の株の買い入れている(昨年末簿価23.5兆円)。
3.過剰流動性の流入
金融緩和の結果、余った資金の株式市場流入も株価押し上げの一因ではないか。
金融緩和が縮小に向かったら
結局は異次元の金融緩和という特殊事情が現在の株高の主因ではないか、金融緩和による弊害も言われており、いずれは「緩和の縮小」に向かうだろう、そのとき上記の要因は逆の動きになるのではないだろうか。即ち円高、日銀による保有株の放出、過剰流動性の流出。こうなったら右肩上がりどころか、また2012年のレベルに戻りかねないのではないか、とAさんは懸念しています。皆さまはどうお考えでしょうか。Aさんの懸念は杞憂に過ぎないでしょうか。