66号 賃貸経費にはどのような項⽬があるのか / 10年先、20年先を⾒据えた産運運⽤が必要
【不動産の小口化アセットのあれこれ】
不動産投資の主⽬的は安定的な家賃収⼊(賃料収⼊)を⼿に⼊れることと⾔いますが、正確には賃料収⼊-賃貸経費=賃貸利益が安定的に得られることが重要です。そこで今回は賃貸利益を考える基礎として賃貸経費にはどのような項⽬があるのかをご説明します。
また、⾒かけの賃貸利益を⼤きく⾒せるために、本来発⽣するはずの賃貸経費の全てを差引かないで賃貸利益●●円というような場合があるので注意してください。
賃料収⼊
通常は、⼊居者から⽀払われる⽉々の家賃と、契約によっては礼⾦や契約更新料が含まれます。⼊居者からの家賃の回収は不動産業者に依頼する集⾦代⾏という形が⼀般的です。これには当然⼿数料が必要です。
また、⼊居者の不払いや、退去があって次の⼊居者が⼊るまでの空室リスクを避けるために、不動産業者が借上げて賃料を保証する仕組みもあります。(⼀般的にサブリースと⾔います。)この場合注意しなくてはならないのは、①⼊居者が⽀払う賃料よりも安くなること(通常10%程度)②2年の契約更新ごとに保証賃料が変わること、です。
賃貸経費-①マンション管理費
管理組合があるマンションの場合は、マンション管理費が発⽣します。清掃やごみ出し、共⽤部の⽇常的な維持管理などの費⽤として使われます。通常、この費⽤は新築後8〜10年頃までは新築時と⼤きくは変わりません。もちろん分譲業者や物件により異なりますので⼀概には⾔えません。
賃貸経費-②修繕積⽴⾦
管理組合があるマンションの場合は、マンション修繕積⽴⾦が発⽣します。これは通常新築後10年以降に必要になる共⽤部の⼤規模修繕に備える費⽤です。外壁の塗装、給排⽔設備の改修等の費⽤は多額になるので、予め⻑期修繕計画を⽴てそれに従って毎⽉⽀払いが必要になります。これは将来的に必ず必要になる費⽤なので、管理組合では⽇常的な維持管理には使えないよう、特別に管理されています。
賃貸経費-③公租公課
固定資産税・都市計画税があります。毎年各地⽅⾃治体の定めた⼟地・家屋の評価額に基づき課税されます。賃貸経費の中では⼤きな割合を占めます。
賃貸経費-④損害保険料
万⼀の場合に備えて⼊居者とは別に専有部のオーナーとして⽕災保険や地震保険を付保するものです。
賃貸経費-⑤専有部維持管理積⽴⾦
エアコンや浴室乾燥機等の室内設備機器の故障修理や買替、また⼊居者退去時のオーナー負担のクロス張替費⽤などに対応する任意積⽴⾦です。発⽣時の臨時⽀出ではなく、予め経費に⾒込んでおくことにより、安定的賃貸利益の実現が図られます。
まとめ
⼀⼝に賃貸利益といってもどの経費を収⼊から差引くかで⾒かけが異なります。
上例の場合、実際⼿元に残る賃貸利益はほぼ200なのですが、管理費と修繕積⽴⾦を引いただけで700と表記されることもあります。⼀⾒沢⼭あるように⾒えますね。⼀⼝家主iAssetやコンシェリアJAssetはケースBのように予想される経費は全て差引いており、それに基づいた利回りです。
【やさしい資産運用のお勉強】
新型コロナウィルスの猛威もわが国では漸く収まりつつあるように⾒えます(5⽉27⽇現在)。しかし、第2波、第3波がいつ来るか予断を許しません。副作⽤の少ないワクチンと特効薬が開発されない限り、コロナ以前の⽣活に戻れないでしょうし、またこれを機に⽣活慣⾏や経済の構造や活動も変わってくるものと思われます。⼈⽣100年時代の今⽇、10年先、20年先を⾒据えた産運運⽤が必要です。
当⾯はデフレの進⾏
⽬先では緊急事態宣⾔による経済活動の停滞により、⾮正規労働者やサービス産業従事者を中⼼に雇⽤が調整されています。また、典型的には航空業界やホテル、旅館などの観光産業の低迷など、経済全体の停滞が暫くは続くのではないか。
その結果、購買⼒は低下し、デフレ経済が暫く続くだろうというのが多くの⼈の⾒解です。たしかに2〜3年のスパンではそのように考えられます。しかし、⼈⽣100年の時代の今、5年先、10年先或いは20年先はどうなるか考える必要があります。
新常態と⾔われる⽣活慣⾏の変化
現在の感染拡⼤状態が収まったとしても3密の回避や⼈と⼈の接触を極⼒減らす⽣活が新常態となっていくのでしょう。飲⾷店では席と席の間隔を広く取る。⼀定⾯積当たりのお客さんの数は減るのでコストアップになる。商店は密の状態を回避するために⼊場制限をする。⼀定時間当たりの客数が減るのでコストアップになる。
これらは⼀例ですが、全般的に⾮効率の⽅向に進み、それを料⾦で吸収せざるを得ずサービスの料⾦は⾼くなると考えられます。
国内⽣産へのシフト
中国の武漢がロックダウンされたときにはサプライチェーンが分断され武漢の⼯場に部品⽣産を委託していたメーカーは減産や⽣産中⽌を余儀なくされました。低コストを狙って世界中にサプライチェーンを張りめぐらしていた企業も今回のコロナ危機の反省としてコストアップがあっても基幹部品の内製化を図ることの重要性を認識しました。
⾷料品などの農産物に関しても同様のことが⾔えるでしょう。各国ともいざという時には⾃国資源の優先的確保に⾛ることは今回のコロナ騒動でも明らかになりました。
⾮効率経済の許容
密を避けるために⼀定⾯積当たりあるいは⼀定時間当りの客数を減らす。⼈件費の安い中国の⼤規模⼯場で⼤量に⽣産することで安く作れた部品を、国内⽣産に移す。コスト⾼の農産物、鉱業資源の⾃給率アップする。
これらは象徴的事例ですが、これからは経済全般に亘り今までの効率性の追求⼀辺倒から、効率性に劣っても⽣活の安全性⾼め、安定的経済活動維持を担保するために⾮効率の許容が必要になるのではないでしょうか。これは世界的傾向になることでしょう。
予想される増税
今回のコロナ対策のための財政⽀出は、今年度の予算では賄えず国の財政⾚字は⼀段と増えることでしょう。東⽇本⼤震災の際には復興特別税ができました。今後何らかの形での増税が予想されます。
⾮効率経済と増税がもたらすもの
冒頭に記したように当⾯はデフレが継続するのでしょうが、全般的経済活動の⾮効率化傾向と増税が続けば物価の上昇、つまりインフレーションが進⾏することが予想されます。スタグフレーション(不況下の物価上昇)を⼼配する⼈もいます。
10年先、20年先を⾒据えた⽣活設計を考える場合には、インフレーションを考慮して、インフレに強い資産運⽤を考えることも必要と思われます。