68号 限られた予算での不動産投資 / ポンジースキームにご注意を
【不動産の小口化アセットのあれこれ】≪限られた予算での不動産投資≫
安全資産が超低利回りの今日、不動産投資は改めて注目されていますが、多額の資金が要ります。ワンルームマンションでも都心の場合3,000~4,000万円します。ローンを使わず限られた予算で不動産投資をする場合、従来は主として中古マンションへの投資が選択肢のひとつでた。しかし、近年、新築マンションの小口化商品も出て来ました。仮に1,000万円程度の資金を運用する場合「中古」と「小口化」とどちらを取ったらよいでしょうか。
1,000万円で買える中古マンション
立地:山手線主要駅から電車で20~30分
築年:30年前後
専有面積:20㎡未満
建物のクオリティー:賃貸仕様(簡素)
専有部仕様例:バス・トイレ・洗面所一体
利回り:5%~7%
JAssetの小口化対象マンション
立地:山手線周辺の都心
築年:新築或いは築2~3年の築浅
専有面積:25㎡前後
建物のクオリティー:分譲仕様(高級感有)
専有部仕様例:バス・トイレ別、浴室乾燥機付
利回り:3%前後
*1室の共有持分10口で1,000万円です。
両者の比較
①入居率(稼働率)
1のような条件の中古の場合、退去後に同じ家賃で募集しても申込が無い場合が多く、賃料を下げて募集する(利回りが下がる)か、空室で稼働率が低下するかのどちらかになってしまう可能性があります。
他方、条件の良い小口化マンションの場合は、入退去の頻度が少ない上に退去があっても短期間で次の入居者が決まるので稼働率が高く(*)1年間の家賃収入は「月間賃料×12月」あまり変わりません。
(*クレアスレントが管理している都心マンションの平均稼働率は98.5%前後です。)
②修繕費用
1のような中古では共用部の修繕積立金が十分積み立てられていない場合が多く、修繕積立金の負担が急に増えたり、また室内の機器や設備、内装等の修繕・維持費用が新築、築浅に比べ頻繁に発生します。他方、新築の小口化マンションの場合は殆ど購入時の計画通りで済みます。
③出口(売却)の価格
仮に10年間保有して売却するとしましょう。1の中古の場合は読めません。1,000万円に近い金額は無理でしょう。
他方、2のような都心の物件の場合はどうでしょうか。ある不動産専門のデータバンクの調査では山手線駅近の10年前に分譲したマンションでは、昨年の中古価格は10年前の分譲時の価格と同じかそれ以上のところが少なくありません。
まとめ
1,000万円でマンションを購入した場合、瞬間風速的には中古の方が利回りが良いようですが、稼働率や修繕費用を考えると実利回りはかなり低くなります。その上出口での売却価格はどのくらいになるか分かりません。つまりリスクが高いということです。そもそも高いリスクは避けて資産の安全運用という面から不動産投資を選んだとすれば、1,000万円の中古マンションはその本来の目的に反するものです。
何に関しても言えることですが、安い掘出し物はなかなかありません。大切な資産を投入する以上は共有持分であっても上質な本物を選んだ方が良いのではないでしょうか。昨今のコロナ問題下でも条件の悪い、賃料の低い物件ほど滞納や空室が増えているようです。他方クレアスレントが管理している都心マンションではそのような傾向値は出ていません。
【やさしい資産運⽤のお勉強】≪不動産特定共同事業について≫
ポンジースキームという言葉をご存知ですか。イギリスのチャールズ・ポンジー(Charles Ponzi)という詐欺師に由来する言葉です。投資家から出資を募ってその資金を運用して配当すると謳いながら、実際は運用せず後から参加した人の出資金を以前に出資した人への配当金に充てる自転車操業的な仕組みのことです。
ここでは、ポンジースキームそのもではそのもではありませんが、わが国で起きた類似した投資事件をご紹介します。
豊田商事事件
1980年代前半に発生した詐欺事件です。豊田商事は投資家に金の地金を売る契約をしてお金を払わせるのですが、金を渡さず、「純金ファミリー契約証券」という預かり証券を渡しただけでした。
実際には豊田商事は金を購入してはいず、投資家の出資金はどこかに消えてしまい、投資家には預かり証券なる紙切れが残ったのみです。信用を高めるためにTVのCMを多数放映したりしました。被害総額は2,000億円を超えると言われています。
安愚楽牧場事件
このビジネスモデルは出資者は雌の繁殖牛を購入してオーナーになります。業者は年1回繁殖牛が産んだ子牛を買取る形で配当します。契約終了時には繁殖牛を販売時と同じ価格で買い戻す、というものです。しかし実際には契約した数ほどの繁殖牛はいないため、個々の契約に見合った数の子牛は産まれません。
産まれた子牛を売却することによって得られる収入を配当原資とするビジネススキームですから、当然配当するための原資が不足してしまいます。そこで、あたかも子牛を販売利益のように見せかけて、実際は新規の出資者に繁殖牛を販売した売上代金を既存の出資者に対する配当に充てました。
出資金の運用から上がる利益を配当するのではなく、新規の出資金を既存の出資者の配当充てるので、新規の出資者が途絶えれば配当できなくなるというまさしく自転車操業に陥りました。同社は2011年に経営破綻し、負債総額は4,200億円に上ると言われています。
ポンジー類似の二つのパターン
ポンジースキームや豊田商事の場合は当初から集めた出資金を運用する意図のない詐欺です。前者は後から参加した人の出資金を以前に出資した人への配当金に充てて資産運用しているかのように見せかける。後者は偽の金の延棒を見せて実際に金を買って預っているように見せかける。謂わば見せかけ商法です。
安愚楽牧場の場合はビジネスの実態はあったのですが、無理のあるスキームのために本来の形での配当原資が得られず、タコが自らの足を食うような自転車操業に陥り結局は投資家に被害をもたらす結果になったと思われます。このような事例は初めはまともな事業のように見えて、事業が行き詰まると共に「タコ足」に変わっていく怖さがあります。
投資リスクの確認を
①非常に高い利回り(業界相場と較べて)
→高く見せるための無理な仕組みがあるのかもしれない
②頻繁なTVコマーシャル、豪華なパンフレット、キャッシュバック等
→多大なコストをかけざるを得ないほど切迫した事情があるのかもしれない
③元本保証(或いはそれと誤解させる表現)
→元本リスクをきちんと説明できないほどハイリスクなのかもしれない
綺麗な花には毒があると言いますが、一見魅力のある条件には裏があるかもしれません。
事業を行っている会社の規模、沿革、風評、運用商品の実態等をよく確認してください。
例えば、iAssetやJAssetのように良質な不動産で登記されるのであれば安心です。