91号 手軽に購入できる小口化不動産のいろいろ
不動産投資というと資産家が行うもの、或いは長期間のローンを借りてするものというイメージがありました。高額のため多くの資金を必要としたからです。
しかし、近年、誰でも自分の手持ち資金に応じて手軽にできるようになってきました。いろいろな種類の小口化商品が出てきたことによります。
今回は商品タイプごとに典型的な商品例を上げながら、投資の目的に応じてどのタイプがそれに適しているかをご説明します。
本文中の商品例として、現在市場にある次の商品のものを記載しています。
- 賃貸型:クレアスライフ「一口家主iAsset」(以下、賃貸型とはこの商品を指します。)
- 任意組合型:クレアスライフ「コンシェリアJAsset」、コスモスイニシア「セレサージュ」
- 匿名組合型:ほとんどの匿名組合型商品(クラウドファンディングを含みます。)
- リート:Jリートの商品全般(ここでリートとは上場リートを指します。)
売買の簡便性や換金性を重視する場合には
第一は株式と同じように証券市場で簡単に売買できるリートでしょう。次に匿名組合型も不動産の所有権の移転を伴わないので比較的簡易です。賃貸型及び任意組合型(以下任意組合型については現物出資型のものとします。)では不動産持分の登記を伴うので安全性が高い反面複雑になります。
換金性についてはリートに次いで事業者による買取がある匿名組合型と賃貸型がほぼ同等です。
元本の安全性を重視する場合には
第一は賃貸型です。共有持分は購入者自身の所有権であり、また優先劣後構造により運用満了時の元本の毀損リスクが軽減されています。次いでやはり不動産の所有権をもつ任意組合型ですが、優先劣後構造はないので換金時のリスクに関しては、賃貸型に劣るものの物件次第という側面があります。
匿名組合型は優先劣後構造がありますが、不動産の所有権は投資家のものではなく事業者に属するため事業者が破綻した場合元本の回収が困難になります。
リートも所有権ではなく、また優先劣後構造もないので、仕組みとしての安全性には他の3タイプよりも劣ります。加えてリートは証券市場に上場されているため、組込まれている不動産の価値の実態とは関係なく、その時の世界的な政治・経済情勢や社会情勢などによりか価格が大きく変わることがあります。
インフレヘッジなどのために不動産の“所有”を重視する場合には
投資用マンション1戸を買うように将来も見据えた資産として保有したいという場合、第一は任意組合型でしょう。運用年数が10年以上のもが多く、また事業者による買取や優先劣後構造がない返面、それが利回りに反映されるのが一般的です。賃貸型もこの目的に添うのですが、運用年数が5~6年と短いので任意組合型に比べ長期保有という点では劣ります。
匿名組合型もリートも不動産自体の所有ではないため「不動産を持ちたい」という方にはあまり向きません。
相続対策を重視する場合には
相続財産は一般的には時価で評価されますが、不動産の場合は相続税評価額という特別の価格になります。それは実際に取引される価格(時価)よりも低くなることが一般的です。そのため、相続財産を不動産で持てば他の資産に比べ相続税の節税効果があります。この目的には不動産現物としての所有権を持つ任意組合型、賃貸型が適します。また相続税評価額は生前贈与にも適用されます。
小口化不動産の場合は50万円や100万円などの小さい単位の金額に分割できるため2人以上の相続人がいる場合は公平な遺産分割(争族の回避)ができます。匿名組合型およびリートは不動産の所有権ではないためこの目的には向きません。
商品タイプごとの特徴
賃貸型 | 任意組合型 | 匿名組合型 | リート | |
---|---|---|---|---|
不動産としての所有権(登記) | あり | あり | なし | なし |
優先劣後構造 | あり | なし | あり | なし |
事業者が倒産した場合の元本リスク | なし | なし | あり | あり |
出口(換金時)の元本リスク | 低い | 中位 | 低い | 高い |
相続財産の圧縮(節税)効果 | あり | あり | なし | なし |
運用期間 | 5~6年 | 10年~ | 0.5~3年 | 特になし |
最低購入価格 | 50万円 | 500万円~ | 1万円~ | 特になし |
購入時の物件の選択 | 可能 | 可能 | 可能 | 不可 |
実際に投資するに当たっては、上記に加えて、商品を提供する事業者の信用リスク、利回りの高低、対象不動産の種類(住居、オフィス、商業施設等)、立地、建物のグレー利回りの高低、対象不動産の種類(住居、オフィス、商業施設等)、立地、建物のグレード、等を充分に吟味してください。