92号 不動産の利回りとは
わたしたちはよく「利回り」とい言葉を耳にします。「あっちよりもこっちの方が利回りが良いからこっちにしようか」と商品選択の尺度にすることもあります。しかし、ちょっと待って下さい。実は「利回り」にもいろいろな利回りがあるのです。利回りが良いと思って買った方が、実際に手許に入ってくるお金が少ないということもあります。
一口で利回りと言ってもいろいろあるのです。今回は、利回りにはどの様なものがあるのかをご説明します。今後、商品選択をするときの参考にしてください。尚、ここの説明では分かりやすくするため投資用マンション1戸を購入する場合を想定しています。
利回りとは
利回りとは通常、投資したお金から得られる1年間の利益を投資金額(物件の取得費用)に対する割合で示したものです。
式で示せば(1年間の利益÷投資金額×100)となります。
したがって、投資金額が同じならば、1年間の利益が大きければ大きいほど利回りは高くなります。
問題はこの「1年何の利益」にどのような数字が入っているかということです。それによって一つの物件でも異なった利回りが出て来ます。
利回りの種類
不動産の利回りには「表面利回り」と「実質利回り」とがあります。
この違いを式で示すと次のようになります。
①表面利回り=1年間の家賃収入÷購入金額×100
②実質利回り=(1年間の家賃収入-賃貸経費)÷購入金額×100
上の式から分かるように、表面利回りの分子は家賃収入そのものであるのに対し、実質利回りでは賃貸物件を維持・管理するための経費が差引かれています。そのため表面利回りの方が実質利回りより高く表示されます。
しかし、実際に手許に入ってくるお金は家賃収入から経費が差引かれたものですから、どの物件を選ぶかは、それぞれの物件の実質利回り同士で比較しないと選択を間違えてしまいます。
例えば、A物件は表面利回りで4%、B物件は実質利回りで3%と表示とされていた場合、A物件の方が高いからと決めてしまうと間違えてしまいます。A物件の実質利回りは3%よりも低いかもしれないからです。
【補足】
物件の利回りを見るときは下記の点も注意してください。
- 分母の投資金額に購入時の諸費用(仲介手数料、登記費用等)が含まれているか
- 家賃収入は100%稼働で想定したものか、空室率を見込んだものか
実質利回りのいろいろ
ところで、不動産の広告などで実質利回りと謳っているものでも、計算に見込んでいる経費の範囲が違っていることがあります。どれも実際に発生する経費なのですが、
下表Xでは固定資産税以下は差引いていません。Yでは専有部維持管理費用(*)を見込んでいません。しかし、何れも「実質利回り」と表示されることがあります。
しかし、XとZ(現実に近い)とでは0.5%の違いがあります。要注意です。
(*)エアコンや浴室乾燥機などの故障・取換費用、入居者退去時のクロス張替費用など。
最終利回りという考え方(売却時の損益まで計算にいれる)
不動産に限らず投資は最終的に投資した資金を回収して初めて本当の利回りが分かります。運用中は他よりも利回りが良い物件でも、売却した時に二束三文になったら意味がありません。仮に10年間の運用を前提とすれば最終利回りは、
((10年間の家賃収入-10年間の賃貸経費)+(売却手取り金額-購入価格))÷10÷投資金額×100となります。
ただし、購入時点で10年後の価格は分かりません。そこで大切なのは確からしさの見極めです。
確からしさの見極め / 小口化商品の活用も
先のことは分かりません。利回り計算で見込んだ家賃収入は下がるかも知れません。マンション管理費や修繕積立金などの経費は増えるかもしれません。最終利回りに大きく影響する売却価格は下がるかもしれません。
このように不確定要素が多い項目によって利回りは計算されています。従って物件の購入の決断にはなるたけ確からしさ(確度)の高いものを選ぶことです。例外を別とすれば●東京都心の●新築/築浅物件であればブレは少ないでしょう。
タイトな需給バランスによる賃料の安定や物件価値の維持・上昇が、また修繕費の大幅なアップや売却時の大幅な値下がりの回避などが期待されるからです。
これらの物件は高額です。資金的に問題がある場合は-「小口化商品」があります。例えば5,000万円のマンションを10口に小口化して何人かで共有する仕組みです。収入・支出の管理等オーナーの業務は全て当社のような不動産の専門家が行います。