96号 資産所得倍増プラン <「貯蓄から投資へ」というけれど>

岸田政権は新しい資本主義を唱え、その一環として資産所得倍増プランを掲げています。
その基本的考え方は「貯蓄から投資へ」によって企業への直接金融を増やし、企業の成長・企業価値の向上を通じて個人の金融資産の増加を図ろうということの様です。
日本の家計金融資産は約2,000兆円。そのうち現金・預金が50%を超えているそうです。現預金を株式や投資信託等の投資にシフトすれば、家計としては現預金でもっているよりも所得が増えるし、それらの資金を受け入れる企業の側はそれを成長投資の原資として使えるので企業価値が拡大される。そうなれば更に家計へのリターンは増大し、「成長と資産所得の好循環」が実現する。という構図の様です。
そして投資の手段としてNISAの拡充を掲げています。

「貯蓄から投資へ」が進まない理由。

「貯蓄から投資へ」というスローガンが掲げられて久しくなりますが、なかなか進まないようです。なぜなのでしょうか。
金融庁の調査によれば、投資未経験者が投資を行わない理由として多いのは、
第1位:「余裕資金がないから」(56.7%)、
第2位:「資産運用に関する知識がないから」(40.4%)、
第3位:「購入・保有することに不安を感じるから」(26.3%)だそうです。
この調査の中で第1位の余裕資金がないからというグループはそもそも2,000兆円の金融資産の構成者としての割合は小さいでしょう。そうすると多額の金融資産を構成しているのは第2位の理由及び第3の理由で投資をためらっているグループの方が中心と思われます。
これらのグループの方に「NISAを使えば大丈夫ですよ」と言えるのでしょうか。

NISAは投資の安全性を高めるのでしょうか。

今回に限らず、投資をためらう人たちを鼓舞するかのように「貯蓄から投資へ」とセットでNISAがでてきます。あたかもNISAを使えば安心と言わんばかりのようですが果たしてそうでしょうか。
筆者の勉強不足かもしれませんが、NISAというのは投資商品そのものではなく、投資商品を入れる箱に過ぎず、NISAという箱の中に入れても投資した株式なり投資信託の価格や配当金変動のリスクがなくなるわけではないでしょう。NISAの箱の中に入れてあれば売却益が出た場合や配当金に対する税金がかからないというだけのことで、株式なり投資信託なりが本来有しているリスクはそのまま残っています。従ってNISAだからといって上記の第2位の理由及び第3の理由が解消されるとは思えません。

現預金の比率が高いのは合理的判断の結果では・・・。

家計金融資産は約2,000兆円の構成者はどのような人たちなのでしょうか。
筆者はなんの統計的データもありませんので単なる推測ですが、例外は別としておしなべて次の様なことが言えると思われます。
①20~30歳代は預貯金する余裕はない。
②40~50歳代はそこそこの年収はあるものの教育資金や自宅ローンの返済で多額の預貯金は困難。
③60代以上の定年後再雇用者や年金生活者が退職金、満期になった保険、親からの相続財産などを当面は余裕資金として現預金を保有している、つまり③の層の人たち(高齢者)が中心ではないでしょうか。
しかしこの層の人たちが持っているお金は、多くの場合、今は必要ないが将来的には必要になると考えられる性格のものです。このようなお金を「資産運用に関する知識がない」にもかかわらず「購入・保有することに不安を感じる」ものに投資することは合理的判断とは言えません。昨年、仕組債が問題になりました。筆者のような素人から見ても危険極まりない商品です。それにも拘らず銀行が奨めるなら安全だろうと購入して多くの方々が損失を被っています。少なくとも将来の必要資金を「分からないこと」、「不安に思うこと」に投資すべきではないでしょう。
国が「貯蓄から投資へ」とのスローガンを掲げ、その実施手段としてNISAを奨めているように思えます。お上に従順な日本人ですが、もしこれで損失が発生したら誰が責任を取るのでしょうか。

「成長と資産所得の好循環」は本当でしょうか。

倍増プランでは貯蓄を取り崩して行った投資が企業に取り入れられて資本増強になるかのように前提していますが、多くの場合実際には企業に資金が入るのではなく単に株主間で保有者が替わるだけのことです。したがって、冒頭の文でアンダーラインを付したような図式が成り立つようなケース殆どありません。
また、倍増プランでは短期的には景気変動の波があっても長期的には企業は成長するものとの前提に立ち、投資によって長期的には家計資産も増え資産所得も増えると考えています。
しかし、低迷の続く日本経済で、また従来とは異なる予測困難な事象が起こり得るこれからの時代に過去の右肩上がりモデルがそのまま当てはまると考えてよいのだろうかという問題もあります。
また時間のレインジについても考える必要があります。高齢者にとって今は余裕資金でも5年後、10年後には必要資金になります。必要とするときに景気変動の底だったら困ってしまいます。上記3の①、②の人たちが20年先、30年先を見据えての投資ならまだしも、少なくとも高齢者にとって「貯蓄から投資へ」によるインセンティブは乏しいのではないでしょうか。

「投資」の対象を広げてみましょう。

過去の日本の高度成長は国民の高い預貯金率に基づき銀行から企業への間接金融により達成されました。貯蓄は企業の成長を支えるエンジンだったのです。ところがいつの間にか「貯蓄から投資へ」という風潮が出てきました。
これは何故なのか? 一番の理由はゼロに近い利息の預貯金を証券投資にシフトすることにより家計の収入増を図らせよう、特に年金生活者に対して年金だけでは老後の生活費は賄えないのだから、貯金を投資に回してしっかり不労所得を稼ぎなさい、が本音なのではないでしょうか。しかし、年金が足りないからリスクを伴う投資をしなさい、というのは無茶な話です。年金問題は年金問題として解決を図るべきでしょう。
話はそれましたが、いずれにしても一般的には年金だけでは足りないのは事実です。お上に「貯蓄から投資へ」と言われなくても自衛上現預金の効果的運用を考えざるを得ません。
ここでNISAは忘れて、先程来申し上げている「今は余裕資金でも、将来的には必要資金」の運用に適した高齢者向けの商品を考えてみる必要があります。一例を挙げましょう。
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